釧路家庭裁判所 事件番号不詳 判決
本籍 白糠郡白糠町大字白糠村字マサルカ番外地
住所 白糠郡白糠町西浜町
農業 貫塩常盤 明治四十五年二月十一日生
主文
被告人を罰金五千円に処する。
右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
但し、この裁判確定の日より三年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
一、犯罪事実
被告人は未成年者貫塩文男(昭和十四年十一月十四日生)の親権者であるところ
第一、親権者は未成年者に代つて労働契約を締結してはならないに拘らず、昭和二十九年一月十六日午後四時頃、白糠郡白糠町西浜通り小沢チヨ方に於て被告人の養子である右文男に代つて同人を同年二月中頃から同年十二月二十日頃の間総額六万円の賃金で中川郡本別町農業青木久雄方において農業の手伝等として労働せしめる契約を右青木久雄と締結し
第二、親権者は未成年者の賃金を代つて受取つてはならないに拘らず、前記日時前記小沢チヨ方において右文男に代つて同人の労働賃金の前借として右青木久雄から現金二万円を受取つた
ものである。
二、証拠
右の事実並に情状については
一、貫塩文雄の司法警察員及び検察官に対する供述調書の記載
二、菊地芳治の司法警察員に対する供述調書の記載
三、青木久雄の司法警察員及び検察官に対する供述調書の記載
四、検察官の昭和二十九年十月五日附電話聴書
五、被告人に係る白糠町長作成の身上調査回答書
六、被告人の当公廷における第一、二回供述並に同人の司法警察員に対する供述調書及び検察官に対する第一、二回供述調書の各記載
を綜合してこれを認める。
三、適条
法律に照らすと被告人の判示第一の行為は労働基準法第五十八条第一項第百二十条第一号に、判示第二の行為は同法第五十九条後段第百二十条第一号に、夫々該当し、以上各罪は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十八条第二項によつて各罰金を合算した金額の範囲内において被告人を罰金五千円に処し、右罰金を完納することが出来ない場合は刑法第十八条に則り金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。但し、本件の所為は情状において、未成年者に家出する悪癖があり同人が学業を嫌つて労働を好み偶々同人の友人等が他に出て働くことを知るや同人も他に出て働くことを被告人に強く要望するところから被告人は同人の為め良い働き口を見付けて同人の貯蓄心等も涵養し一人前の社会人たらしめんとしてPT会の会長たる経歴のある青木久雄方に就労せしめるに至つたものであることが認められるので刑法第二十五条を適用して本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとし訴訟費用の負担については刑事訴訟法第百八十一条第一項を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 海野賢三郎)